だけど、分かっていることと許す、ということは別だ。

そう恭弥は内心で呟いて、の腕を取った。



ぐいぐいと引っ張っていく間が言い訳がましく叫んでいたが、とりあえずその言葉は全て無視をした。





10年経って心が狭くなったのかもしれない。

彼女が自分以外とあんな会話をしていることが、許せない、なんて。







ばたん、と閉じたドアに、ハルは漸くフゥと息を整えた。


そうして。

視線を動かせば、どこか不機嫌そうな彼が見えた。




「ツナさん?」

ひょっとして、何かしてしまっただろうかと考える。


逢えなかった・・・というのは、あのマフィアの抗争やらその後の片付けやらで、仕方が無いことですし。

それは彼も同じなのだから、それに対して怒っているわけではない。



なら、・・・・!



「ハ、ハルぶさいくですか!?」

ガバっと急いでハルは急いで目の下を覆った。

それに、綱吉は虚を突かれたようにキョトンと目を見開いた。




「やっぱり、こんな隈一杯つけた目で来るなんて・・・っ!ハルし、失礼しっ!」


グルリと持ってきた資料を机の上に置いて立ち去ろうとするハルを、綱吉は座ったまま引き寄せた。

腰にぐいっと手を伸ばして引き寄せたハルの腹部に、そっと頭を委ねる。




「ツナ、さん?」



戸惑ったようなハルの声が聞こえて、綱吉は一層腰に回した手に力を込めた。


「嫉妬、してくれないんだ」

ポツリ、と呟いた言葉をハルは理解できなくて、首を傾げた。



「はひ?」



との会話・・・真っ先に飛びついたのはのほうだし、俺放っておくし」



ねぇ、と服の上からとはいえ、ピッタリとくっ付いた唇が動いて、ハルはその言葉も理解して、顔を紅く染めた。



「ハ、ハルは、ツ、ツツツツナさんを信じてますっ!・・・・・・で、も」

疲れのせいなのだろうか。


いつもなら言い切れるその言葉が、最後に逆接を口にした。






「ん?」

早く言って、と言わんばかりに綱吉はハルの腰を抱いたまま腹部に擦り寄る。






「・・・・・・浮気は・・・いや、です」






そっと首の後ろに手を回して柔らかな茶色の髪に顔を埋めたハルに、綱吉は優しく抱き寄せた。

ひょいっと膝の後ろに手を回して、不安定な形ながらも綱吉はハルを自分の膝の上に乗せた。



軽い、けれど想いのせいか、そこには確実に彼女の重みがあって。




綱吉はなおさらぎゅうっと強く抱きしめて、ハルはそれに答えるように綱吉をぎゅうっと抱きしめた。


「絶対にしない。だから」

ずっと傍にいて。




言葉にするには全然足りないその強い思いを表すように、綱吉はハルを自分の腕の中に強く閉じ込めた。









君が生きている、そのことに感謝を




( その後、ハルを膝に乗せたまま眠る綱吉とハルに溜息を吐いて、そっと黒い帽子を被った少年が二人に毛布を被せた )