聖なる処刑の日が
こんな風になったのは
何時からだろうね
Valentino felice!! 〜Happy Valentine〜
うららかなまだ風の冷たい昼下がり。
とある一軒家から悲鳴が上がった。
「なぁぁぁぁああああ!!!!!!」
悲鳴を上げた張本人・沢田綱吉。
「何で私が居てそこまで驚くの」
それに呆れた私・。
高めに結った髪が揺れる。
ちなみにエプロン装備中。
「だ・・・っな・・・・!!」
「ちゃんと日本語を話しなさい。日本語を」
ハァと溜息を漏らし、今にも尻餅をつきそうなツナを見る。
何故かツナの表情は蒼白。
「なんで居るんですか!」
「居ちゃ悪いの?」
私なにかしたか?
そう問うと俯いて言葉を詰まらせるツナ。
「や・・・別に・・・そういうわけでは・・・」
「それに今日はビアンキに呼ばれたんであって、別に遊びに来たわけじゃないわよ」
「何で・・・」
何でってそりゃ・・・
「バレンタインだって」
その一言にツナの表情がさらに青白くなった。
「ギャーーーーーーー!!!!!」
「?」
悲鳴上げながら部屋へと走り去ってしまった。
「何なんだ・・・」
「どうしたの、?」
「ビアンキ」
声のした方を向くと、なにやら変な煙を上げたボウルを持つビアンキが立っていた。
「ビアンキにバレンタインで呼ばれた、って言ったらツナが逃げた」
「そう・・・」
専ら逃げた事には興味無さそうにするビアンキ。
それだけですかい姐さん。
「は誰にあげるの?」
「居ないから自分で食べるよ」
「あら勿体無い。は料理、上手なのに」
「じゃあビアンキにあげるよ」
「ふふ、ありがとう」
そんな会話をしながらキッチンへ入っていく。
「京子とハル、何時来るんだろう」
きっとツナが驚くだろうね。
「そろそろ来る筈よ」
「そっか」
机の上に置かれる包丁を掴むと、板チョコを宙に放り投げる。
シュシュッと瞬時数百回振ると、落下予定地にボウルを持ち、細かくなったチョコを入れる。
「流石ね、」
「まぁね」
自分で言いたくないけど人間技じゃないネ☆
その時玄関のドアフォンが鳴った。
一方、こちらは男性陣。
「最悪だ!またあの悪夢が・・・!!」
頭を抱えて唸るツナ。
「ビアンキはもう無理としてさんって料理できるのかな・・・あぁもう・・・!!」
こらこら。失礼だぞ10代目。
「おいコラツナ」
「んぎゃっ!!」
何処からとも無くやって来た黒スーツの赤ん坊、リボーンがツナを勢い良く蹴り飛ばす。
「の料理の腕は最高なんだぞ」
「へ?」
呆けたように聞き返すツナ。
「はイタリアの三ツ星レストランで自分の料理を出せる位の腕前だぞ」
「えぇぇぇぇえ!?!?」
本日3回目のツナの悲鳴が並盛町に響く。
その時ガチャッと音を立てて綱の部屋の扉が開いた。
「ツナ、煩いよ」
「ギャー!出たー!!!」
「・・・」
ヒュヒュンと風を切り、ツナの直ぐ横の床に3本の包丁が突き刺さった。
見事に床が抉れ、深々と刺さっている。
「人を化け物が出たみたいに言わないでくれる?」
「す・・・すみません」
「まったく」
また一つ溜息をつくと、床に刺さる包丁を拾い上げる。
「ビアンキがリボーンにスイートかミルクか聞いて来いって言われたからさ。どっちがいい?」
「は作らないのか?」
「私は別に作るよ。流石にバレンタインで死人出したくないからね」
『よくわかってらっしゃる!!』
ツナは心の中で感動したそうな。
ヴオォォン
突如チョコレートを混ぜていると沢田家の外に響いたエンジン音。
「?」
「先輩?どうしたんですか?」
「え?ううん。何でもないよ」
・・・。
どこかで聞いた事のある・・・。
キキィッ
ガチッ
コツコツコツ
誰かが歩いてくる音がする。
その時、携帯が鳴った。
ピピピピピ
コラそこ。単純な音とかいう突っ込み禁止。
「先輩、携帯鳴ってますよ」
「んー」
手を洗ってタオルで拭くと、机の傍においてあった携帯を掴む。
そしてパカッと開いて何時もの人間から何時ものメッセージ。
『今から行くから』
「・・・」
家の扉の前からメール送信するなよ。
ていうかどこからツナの家に居るって情報聞き出したんだ。
ピンポーン
流石に今回はドアを壊されてはたまらない。(正月企画夢参照)
第一他人の家だし。
誰かは分かっていたから、玄関へ向かうと素早く扉を開ける。
「やぁ。僕に黙って誰かの家に居るなんて良い度胸だね」
爽やかな表情で挨拶してくれるな風紀委員長。
その言葉を軽く無視して思いっきり不機嫌そうに睨み上げる。
「何しに来たの、恭弥」
「さ、今日何の日か知ってる?」
「聖バレンタインが処刑された日」
「そんな血腥い事聞いてないよ」
「本当の事でしょ。もう直ぐ終わるから大人しく待ってて」
「わかった」
とりあえず玄関に居てもらう事に。
あ、勿論許可は得たよ?
恭弥は恭弥で『許可?そんなもの必要ないよ』とか言ってたけどね。
人様の家で位礼儀弁えなさいよ。
「先輩、誰か来たんですか?」
京子が神妙な面持ちで尋ねてきた。
さっきの会話は聞こえていなかったらしい。
「ううん。何でもないよ。あ、コレ出来たから皆で食べて」
適当にラッピングできた物のうち3つを三人に差し出す。
「わぁ!!嬉しいです!ありがとうございます!!」
「先輩のチョコレートが食べられるなんて!!ハル、幸せ者ですっ!」
もらったチョコレートを持ってきゃっきゃと喜ぶ2人。
微笑ましいねぇ・・・。
「ありがとう、。私は・・・」
「ビアンキ。ビアンキは本命居るんだからリボーンだけにあげなよ」
「そうね・・・そうするわ。また今度手料理をご馳走するわね」
「うん。是非そうして」
『・・・セーフ』
ごめんねリボーン。
私まだ死にたくないの。
パタパタと二階へ上がると、ツナの部屋の扉を開ける。
「ツナーこれ上げるから適当に隼人とかにあげといて」
それだけ言うと返事を聞かないで扉を素早く閉める。
閉めた後でまたその中からツナの叫びが聞こえたとか聞こえなかったとか。
それが歓喜なのか何なのかは私の知ったこっちゃないし。
「おまたせ」
「遅い」
「ごめんって」
外に出ると風が冷たかった。
髪を結ったままだから首元が涼しい。
マフラーを首に巻きなおす。
「っと、恭弥。コレ忘れる前に渡しとく」
淡い藍色の、小さな紙袋を恭弥に差し出す。
「Valentino felice.」
はにかんで笑うと、少し照れた様に恭弥は私の差し出すそれを受け取った。
「ありがとう。」
お礼に貰ったキス。
そっと重ねられた唇は冷たかった。
けれど・・・今この場所は暖かい。
鉛色の冷たい風の吹くこの空の下
年に一度
今日この日
この想いは
貴方だけに・・・
〜後日談〜
「ねぇ、あいつらにもあげたって本当?」
「は?」
「あの三人組の事だよ」
「あぁ・・・ツナと隼人と山本ね」
「・・・」
「何むくれてんの」
「・・・」
「本命は恭弥だけだよ?」
「・・・(そういう事じゃないんだけど」
「来年は恭弥だけにするから」
「・・・絶対だよ」
「うん。約束」
*****
「Lovers Concerto」神龍紅桜姫様から強奪してきたバレンタイン企画夢。
ほぼオールキャラでほのぼのしてる所が何とも・・・
でもやっぱり最後は雲雀で締めてくれました。
少し嫉妬気味の雲雀が可愛らしいです(笑)
紅桜姫様、素敵なフリー夢、有難うございました!!
素材提供 clef