新年を迎えて
また一緒に道を歩く
今年もよろしくね
Un anno nuovo e felice!!! 〜正月編〜
「・・・」
「あ、恭弥。オハヨ」
声をかけるとなにやら辺りをきょろきょろと見渡す恭弥。
「あれ?あの二人は?」
「初日の出が昇る前に帰らせたよ。ちなみに私寝てないから」
「寝てくればいいのに」
「おせち料理とかの準備があるから寝られないのよ」
「・・・」
「顔洗っといで。そしたら食べよ?」
そういうと素直に恭弥は頷いた。
よかった。機嫌は悪くないみたい。
「「いただきます」」
ぱきゃっと割り箸を割ってお重の中から色々な物を小皿に取り分ける。
「はい」
「ありがとう」
自分の分も取って食べる。
お。初めて作ったにしては成功かも。
・・・はっ!
「味大丈夫?私の趣味に合わせちゃったけど・・・」
「ん。大丈夫」
「よかった」
そんなほのぼのとした雰囲気はつかの間。
パシュッ
ガシャーン!
「「!?」」
またガラスが割れた。今回は意図的。(前回も意図的だったような・・・)
しかも銃でサイレンサー付き。これは・・・
「隠れてないで出てきたら?」
お雑煮を食べながらそう言うと庭の草陰から黒スーツの赤ん坊が現れた。
「良くわかったな」
「銃刀法違反で訴えるぞ。つかガラス直してよ」
「俺に指図するな」
「とりあえず帰れ」
そんなことを言って睨み合っていると恭弥が口を開いた。
「赤ん坊、悪いけど今日は帰ってくれるかい?」
「そうはいかねーぞ。にはこれを渡しに来たんだ」
そういってひょいとハガキを渡される。
「なにこれ。年賀状?」
「そうだぞ。ボンゴレファミリー9代目からな」
「あ、私なにもやってないや」
「お前いつか殺されるぞ」
「いつでもかかってこいや」
左手の親指をビッと下へ向ける。
「それとコレ、お前の両親から」
どこに持ってたのか、でっかい白い箱を私の前に差し出した。
「これは?」
「着物、とか言ってたぞ」
「あー・・・」
ぱかっと箱を開けると淡い藍から蒼色の見事なグラデーションに染められた着物が入っていた。
・・・正月にコレを着ろと言うのか父よ、母よ。
「いいじゃない。着てよ」
スパッと言うな!!
「やだよこんな青いの。しかも絵柄が龍だよ?」
「お前の家系の象徴じゃねぇか。お前のママンも着たんだぞ」
母よ・・・。
「着ないって言うなら咬み殺「分かったよ!着ればいいんでしょ!?着れば!」
バッと着物の入った箱を掴むとドタドタと自室へと向かう。
「流石だな、雲雀」
「赤ん坊もね」
「・・・やっぱりヤだこれ」
着てみたものの、幅、丈共にピッタリ。
いつの間にサイズ測ったんだ母よ。
「これで外出たくないな・・・」
髪の毛をいじりつつやっぱり着れなかった、とかいうオチで済まそうか・・・。とか考えてみる。
その時背後の扉が開いた。
「何だ。着れてるじゃない」
「!?」
開いたドアの向こうに恭弥が立っていた。
「な・・・なななな・・・っ!」
「七?」
「っ!!入ってくんなぁっ!!!!」
傍にあった簪(お手製)を数本掴むと恭弥に向けてぶん投げる。
ん?何で簪なんて持ってるって?がくれたのさ。
投げると同時にバタンと扉が閉められ、カカッと音を立てて扉に簪が突き刺さる。
勿論お手製だからドアを軽く貫通する。
「・・・手、切ったんだけど」
「ノックも無しに入ってくるお前が悪いっ!!」
「もう服着てたじゃない」
「煩い!Annoying!!Importunando!!!」
扉越しに叫ぶ。
ハァと溜息が聞こえた。
着崩れた着物を素早く直し髪をさっさと結い上げる。
ぴきっ
バンッ
「はいよお待たせしましたよっ」
鍵を軽く壊してドアを殴り開ける。
怒りのボルテージ?MAXに近いですよ。
「似合うじゃない」
そういって笑むから、怒る気も失せる。
「ほら、行くよ」
そういって手を差し出すから、掴んでしまう。
開けられたドアを潜る。
外の風は思った以上に冷たかった。
「・・・凄い人」
まず何よりも神社にいる人の数に驚く。大晦日以上だね。
結局着物でバイクに乗るわけにもいかず、恭弥と歩いて神社へ向かった。
特に文句も何も言われなかったけど。
「これじゃあ境内へ行くまでで苦労しそうだね。恭弥大丈夫?」
「何が」
「人多いから」
「・・・お馬鹿だね。は」
「なっ!」
「がいるからいい」
その言葉に目を見開くと恭弥はフッと笑い、繋いだ手を引っ張る。
「早く行こう」
「・・・うん」
ほんの少し、俯いて微笑んだ。
境内へ向かう途中の階段までの道は、以外にも人があまりいなかった。
「あれ?先輩」
「さん!」
「京子にハル。綺麗だから気付かなかったよ」
「先輩こそ!綺麗です!」
淡い黄色と桃色の着物の京子、真っ赤な生地に金色の蝶が描かれた着物のハルだった。
「「あけましておめでとうございます」」
「おめでとう」
綺麗に声を揃えての挨拶。妹達が影に見えたよ・・・。
「あれ?二人がいるって事はツナ達もいるの?」
「はい。もう直ぐ来ると思います」
「あ!ツナさん!」
そうハルが言った方向を見ると、ツナを初めとするいつものメンバーが揃っていた。
「京子ちゃ・・・ってさん!?」
「なんでそんなに驚くの」
「い・・・いえっ・・・その・・・」
「凄く綺麗です!」
そう誰かが叫んだかと思えば隼人。
「ありがとう」
そう言って微笑むと顔を赤くした。
「先輩着物似合うっスね」
まじまじと私を見る好青年こと山本武。
それから黙って隼人と山本を睨む恭弥。
「」
「?」
呼ばれた方を見ると珍しく和服を着たリボーンがいた。何処に居たんだよ。
「これから全員で境内に行っておみくじ大会をするんだぞ。雲雀と一緒に来い」
何か言葉を切り出そうとした時急に後ろに引かれた。
「あ・・・っぶないな。どうしたの、恭弥?」
「・・・」
何も言わないところを見るとご立腹のご様子。
「ねぇちょっと・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「ねぇってば」
恭弥・隼人・山本の無言の睨み合いが続く。
「ねぇ・・・」
私の呼びかけなど無視。その時三人がそれぞれ武器を構えだした。
そして私もキレた。
「やめろっつってんでしょうが!!」
その渇に隼人と山本は驚き、恭弥は素直に武器を収めた。
「ここ階段の上がる所だから戦るなら他所行ってやりなさい!」
その言葉に武器を収める二人。
「で、ちなみに言うけど・・・」
恭弥の傍に寄ると恭弥の腕に自分の腕を絡める。
「境内には恭弥と行くから。おみくじ大会は不参加と言う事で」
そういってニッと微笑むと、そこに居たリボーン以外の全員が驚き目を見開いた。
もちろん恭弥も。
「行こ、恭弥」
そう言って恭弥の腕を引っ張ると、硬直が解けたのかぎこちなく歩き出した。
「じゃあね、皆。今年もよろしく!」
そう言って手を振ると境内へ足を進める。
残った者達の中でリボーンがニッと笑っていたのは、誰も知らない。
「? 恭弥?」
横から見上げる恭弥の顔が、やけに笑んでいるから。
「何でもないよ」
そういって満面の笑みを浮かべる恭弥。
境内は不思議と人が居なかった。
ガラゴロと鐘を鳴らすとパンッと手を打ち鳴らす。
お願い事といえばやっぱり
『・・・今年も・・・恭弥と過ごせますように』
ふと恭弥の方を見るけれど、勿論彼が神になんて願いをするわけも無く、ただ無言で社の方を見つめている。
その視線に気付いたのか、恭弥がこちらに顔を向ける。
「? どうしたの、?」
「・・・何でもない」
社から踵を返し、石段を降りる。
そこから2、3歩離れてゆっくりと石段を降りる恭弥へ振り返り笑顔で言う。
「今年もよろしくね」
驚いたように少し目を見開くと、恭弥も微笑んだ。
「こちらこそ」
手を繋いだ帰り道
今年も色々あるだろうけど
どうか、どうか
よろしくね
* * * * *
神龍紅桜姫様の企画投票において、リクエストさせて頂きました。
正月ギャグ夢です。でもやっぱり最後は甘い!
フリー配布に甘え、またまた頂いてきました。
紅桜姫様、有難うございました!!
神龍紅桜姫様のHPはこちらからどうぞ!
素材提供 P−HOUSE