新しい年を迎えましょう



新しい時を迎えましょう



君と一緒に・・・




Un anno nuovo e felice!!! 〜年越し編〜




学校も冬休みに入り委員会活動も特に無く(用もないのに何度も呼び出し喰らったけど)、平穏に時が過ぎる。


・・・平穏すぎて怖いくらいだ。


カレンダーを見ればもう12月31日。


大掃除?30日に終わらせましたよ。


時計を見ると午後の2時前。
今のところ恭弥からのメールは無し。

「よし」

元旦のための買出しに行こう。


ん?一人なのにおせち料理なんて食うのかって?

食べるよ?何か?

え?それ以前に作れるのかって?

失敬な。これでも料理は得意ですよ。

そりゃさ、去年まで本国帰って家族やイタリア滞在中の龍家と一緒に盛大に宴を開きましたよ?

でも日本へ行けと半ば強制的に送られて新年だから帰って来いなんてふざけるなって話ですよ。


手早く身支度を済ませ家を出る。
真冬だからか昼間で太陽が昇っていても頬を撫でる風は刃のように鋭い。

「寒〜・・・」

マフラー巻いてきてよかった・・・。



おなじみ並盛商店街にて。
とある商店で品物を見ていたときにふと後ろから声をかけられた。

「あら、じゃない」
「ビアンキ」
「偶然ね」
「ビアンキも買い物?」
「えぇ。ママンに教えてもらっておせち料理とかいうの作ってみようと思って」
「へぇ・・・」

ツナ、隼人、他沢田家の皆さんに合掌。


それから少し一緒に歩いて買い物をする。

一人暮らしよね?」
「うん」
「だったらウチに来たら?一人で年越しは寂しいじゃない」

寂しい以前にビアンキの家じゃないでしょうに。

「ううん。毎年煩かったから今年こそは一人で過ごしたいの」
「あら。まぁいつでもいらっしゃい」
「アリガト」
「じゃあ私はこっちだから」
「ん。良いお年を」

日本人特有年越し前の挨拶で別れを。

「良いお年を」

笑顔で手を振った後ビアンキと分かれた十字路。

反対側の道を私は歩いた。




『・・・にしても』

人多いな。
年末だけあって商店街は人であふれ帰っている。
並盛町の何処にこんだけの人口が居るんだ!!

『さっさと買い物済ませて帰ろう・・・』

ちゃっちゃかおせち料理に必要な物、煮物に必要な物などを買い揃えていく。
おぉっと年越し蕎麦も忘れずに。




さてはて、買い物を終えて帰宅。

「ただいま〜っつっても誰もいないか・・・」

誰も居ない空間に響く自分の声。無駄に広すぎんだよこの家。

自分で言ってて結構虚しいぞ。

リビングへと行き手を洗うと買ってきた物を冷蔵庫に詰め込む。
何だろ。まだヤな予感がする・・・。

「あーもう!やめヤメ!」

ぱたむと冷蔵庫を閉めるとコタツに飛び込む。


ゴッ


「った!」


足打った・・・っ!


「冷たっ!」


あ、コタツスイッチ入れてないや。


『馬鹿か私は・・・!』


どうでもいいことに自己嫌悪を感じる今日この頃。
お゛お゛お゛と一人あまり暖かくないコタツで頭を抱えて唸っていると携帯が鳴った。

『誰だよこんな時に・・・!』

メールらしい。件名を見ると『恭弥』の文字が。
・・・やーな予感。そうか!これか!




『今から行くから』



ビキッ



・・・。このまま携帯ぶち割ったろか。
ギリギリと携帯を握り締めているとドアフォンが鳴った。
早いな。まさか家の前からメールしたのか・・・?



ピンポーン


『出てやるもんか』


ピンポーン


無機質な電子音が部屋中に響く。


ピンポ・・ッガガガ


『ん?・・・ガガガ?』


ベキッバキッバキッ


『!? ドア壊す気か!?』


急いでコタツから出ると玄関へ走る。


「待っ・・・!」



バキャ



遅かった



ぶっ飛んだドアの瓦礫の向こうには黒光りするトンファーを構えた破壊者・雲雀こと恭弥が立っていた。

「あ、なんだいたの」
「いたの?じゃないよ!」


居なかったらドア壊して不法侵入してたんかい!


ビュオォと容赦なく外からの冷風が室内に広がる。

「あーもう!どうしてくれんの!?」
うるさい」
「煩いじゃねっつの!」
「風紀委員呼んで直させるよ。それでいいでしょ?」
「・・・良くないけどまぁいいや」


あまりの適当な返答に頭を抱える。


今度合鍵渡しとこう・・・。


「ねぇ、いい加減入ってもいい?」
「あーあーハイハイどーぞっ!」

リビングへの扉を蹴り開ける。

「その扉壊しても直してあげないからね」
「・・・」

あーもー・・・全て壊れてしまえぇぇぇ・・・。

頭を抱えてどんよりしているといつの間にかコタツに移動したのかしっかり暖まってやがる。

「ねぇ
「何」
「リモコンは?」


・・・ぷっちーん


「自分で勝手に取りやがれ」
「何怒ってんの?」
「自分の胸に手を当ててよーーーーーーーく考えて御覧なさい」
「?」
「ふんっ」

ぷいっとそっぽを向く。かくいう恭弥は訳が分からないと言うように首をかしげている。
分かってないからタチ悪いったらありゃしない。
その後暫くしてから風紀委員副委員長草壁率いる修復部隊が到着し、小一時間でドアは直された。


ありがとうございました〜。




その後時計が指す時刻は8時過ぎ。

「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」

何とか夕飯も食べ終えましたとさ。

何故恭弥がいるかって?

知らないよ!!

結局夕飯まで食いやがって!

食器を洗いながら言葉を切り出す。

「で、恭弥」
「何?」
「いつになったら帰るわけ?」


「帰らないよ」


ハ?

ちょっとマテや。お皿落としそうになったぞ。

「可笑しいな。幻覚まで聞こえてきちゃったよ。はっは〜」
「幻覚じゃないから。一人でしょ?一緒に居てあげようと思って」
『余計なお世話だ・・・っ!』
「それに・・・と年越ししたいし、ね」
「・・・」

・・・。

・・・まぁ・・・悪くは無いかな。うん。

「・・・分かったよ。でもお蕎麦あんまり無いよ?」
「いいよ別に」
「・・・そう」

カチャカチャと食器を洗う音がリビングを支配する。


てゆーか手伝えよ・・・。



「はー・・・。もうすぐ今年も終わるね」
「そうだね」

片付けも(恭弥に手伝われる事無く!)無事に終わりコタツにて。

ん。やっぱりコタツにミカンだね。

紅白歌合戦もはじまってもう後半。カウントダウンまでもーちょっと。

ん?どうしてそんなに時間が立つのが早いって?

ドアの片付けもしてたんだよ!!

ハイ。風紀委員はドアを直してはくれたけれど片づけまではしてくれなかった。

直したら直したで草壁の野郎とっとと撤退しやがって!

おかげで皿洗いの後掃除しましたよ。せっかく片付けたのに・・・っ!






バラバラバラバラ・・・


「・・・妙にヘリの音近くない?」

「そう?」

「しかも動いてないみたい」

「分からないよそんな事」

「そーデスカ」



バラバラバラバラ・・・


「煩いな」

「煩いね」


バラバラバラバラ・・・


その音にイライラしているとテレビに映る人達がわっと盛り上がった。

『5!』

「もうカウントダウン?」

「だね」


バラバラバラバラ・・・


ん?

「ねぇ・・・音近くなってない?」

「? 気のせいじゃない?」

『4!』


バラバラバラバラ・・・


『3!』

「やっぱ近付いてるって」

「・・・何のために」

同じ質問を繰り返していたからか、恭弥が少し苛立ち始めた。

『2!』


バラバラバラバラ・・・


「わかんないけど・・・」

『1!』



『ぜ』

ろ!と続くはずだった・・・




ガシャーーーーーーーン!!!




「「Un anno nuovo e felice!!!」」
(※A happy new year!!)





元気良くリビングに響く可愛らしい女の子二人の声が響いた。





「お前らかーーーーーっ!!」





解説しましょう。

テレビの人達がカウントダウンで0!と叫ぶと同時にいきなりリビングの窓が割られて妹’sが飛び込んできたのです。






〜事件後・リビングにて〜

とりあえず窓ガラスを補強して恭弥に妹だという事を説明。暫く待ってもらうことに。
こういうことは分かってくれる人で良かった・・・。
その後妹二人・をリビングの隣の畳の部屋に正座で座らせる。

「ハイ。それぞれ理由を10秒以内に述べなさい」
姉さん本国に帰らないって言うからと来ちゃった」
「こら、!ごめんなさい、姉さん。でもどうしても会いたかったから・・・」
「だからってFBI捜査官じゃないんだから玄関から入ってくれば良いでしょうが」

「「だって面倒だし」」

「・・・はぁーー」

「それに!ここら辺空港無いじゃない」
「だから飛び降りるしかなくて・・・」
「ロープなりハシゴなり使いなさいよ」

「「面倒だもの」」

「・・・」


姉さん私達二人なら来ても良いって言ったじゃない」
「だからヘリ出してもらって来たんだよ?」
「まぁ・・・来ても良いとは言った。でもね、誰も家を壊してくれと言った覚えは無いんだけどね」

「「だって・・・」」

「だってもクソも無い。まぁ今日は泊まる事許すから明日になったら帰りなさい」
「でも・・!」
「あんたたちはあっちで新年のパーティーにでなきゃならないんでしょ?」
「だったら姉さんも連れてく!」


「・・・二択、選びなさい。10秒以内。このまま素直にウチに泊まるか・・・」


腕に固定されていた鉄扇を袖を通し手中に収め、開くと構える。


「・・・そのあからさまに父さんからの命っぽいものを遂行して今直ぐこの家からつまみ出されるか」


「「お世話になります」」


二人して深々と頭を下げた。それを見て鉄扇をパチンと閉じる。

「よろしい。っつーわけで恭弥、いい?」

「・・・駄目って言っても遅いでしょ」

「初詣は一緒に行こうね」

「当たり前。もう寝るから」

そう言うとコタツから出て部屋に行ってしまった。

機嫌損ねちゃったかな?

というよりも勝手に人の家に自分の部屋作るなよな。誰が掃除してると思ってんだ。



「ねっ!ねっ!姉さん!」
急に近寄ってきてがっしりと左腕にしがみつく
「明日あいつと初詣行くならさ、今日私たちと行こうよ!」
左に同じく右腕にしがみつく
「あーー・・・」
面倒だな。てか疲れたよ。


「「ねっ?」」


・・・我が妹ながら可愛いぞ。

「分かったよ・・・」


「「やったぁ!」」


明日確実に恭弥に殺されるな・・・。

項垂れながら極寒の中、並盛神社へ妹達に拉致られましたとさ。



・・・あ。年越し蕎麦食べるの忘れてた。









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