その姿を見たとき、私は泣きそうになった。

 

安堵と、痛みを伴う嬉しさで。

 

 

 

灰色の夢

 

 

 

次の日。

久々に冷蔵庫を開けてみると見事に空っぽだったため、買い物に行くことにした。

普通っぽい服に着替えて部屋から出ようと扉を開け――――――幻覚が見えて閉めた。

 

 

「・・・・・・・夢か。うんコレは夢」

「夢でいいから入れなよ」

「幻覚が喋った・・・・・・・・・・・・おまけに不法侵入」

「――――よっぽど咬み殺されたいんだね。お安い御用だ」

「どうぞお入りくださいませ」

「邪魔するよ」

 

 

 

出掛けようと扉を開けると幼馴染が腕を組んで正面の壁に寄り掛かっていた。如何にも待ち構えてましたみたいに。

何で此処が分かったんだ。

 

 

 

「ボンゴレの情報部って結構優秀でね。携帯会社のパソコンにハックしただけだよ。これ携帯の番号でしょ」

「・・・・ああ、そうですか」

 

 

 

そうするよう、仕向けたのは私だ。

来てくれる事を、望んでいた。

 

でも次の日に来るなんて早すぎるだろう!

 

 

 

「何処か行くの?」

「買い物に。久々に家に帰ってきて冷蔵庫の中空だから・・・・晩御飯とか作らなきゃいけないし」

「ふうん、そう」

 

(ふうん、そう。・・・って他にマシなリアクションは無いのか!?)

 

「・・・・・・・コーヒーか日本茶なら出せるけど、どっちが良い?」

 

 

 

仕方が無いし、取り敢えず立ち話も何なので家に招きいれようとすると。

何でもないような顔ですっと腕を取られた。そしてそのまま強引に引っ張られる。

 

 

 

「先に買い物に行こう」

「はい?」

 

「君とはじっくりと話したいしね」

 

 

 

じっくりと、にアクセントを置いた何かを含みまくった口調。

非常に嫌な予感がして、私は慌てて話を逸らす。

 

 

 

「・・・・・ちなみに恭弥、お仕事は」

「オフにしてもらったよ」

 

(・・・強制的にオフにした、の間違いでしょうが)

 

 

「不満?――この僕が、態々荷物もちになってあげようと言ってるんだけど」

 

 

(・・・・・・・・相変わらずの超自己中男め・・・)

 

「・・・・・何か言った?」

「いえ、何でもゴザイマセン」

 

 

 

とまあこんな訳で無理矢理買い物について来られ、こいつは顔だけはいいので何かと注目を浴びつつ。

 

 

 

「え、何でもう一個入れるの?」

「・・・・・・僕が食べるから」

「晩飯まで居る気!?」

「泊まる気」

「は!?あ、ちょっと!」

 

 

 

外で昼を一緒に食べ、帰ってきて渋々彼に晩御飯を作り、食後のお茶の時間でようやく一息吐いた。

 

 

・・・今日も厄日だ。

 

 

 

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