ボンゴレ・ファミリーが白だなんて、本当は、そんな事わかっていた。

でなければマフィアの本部なんかに足を踏み入れたりはしない。

 

たとえマスターの頼みであっても。

 

 

灰色の夢

 

 

ゆっくりと、意識が浮上する。

久々の休暇だからだろうか。実に穏やかな気分で朝を迎えた。

 

(・・・・・今、何時・・・・?)

 

目覚まし時計を置いている棚に手を伸ばすと、そこに在るはずの物が無い。

 

 

――――正確には、潰れて原型を留めていない何かの残骸があった。

 

 

 

「っな・・・・!?」

 

 

 

私は一気に目が覚めて起き上がる。

棚上では、どこから見ても元・目覚まし時計であっただろうモノが見事に潰れてバラバラになっていた。

そう、まるで、何か硬いもので叩き割ったように。

 

叩き割る。

硬いもの?

 

考えが纏まる前に、リビングへと続くドアが開いた。

 

 

 

「あれ、起きたの」

「・・・・・・・・・・・・・・恭、弥?」

 

 

 

何で恭弥がここに居る。と言いかけて、昨日の記憶が波のようにやってきた。

 

そうだ思い出した。

昨日昼前に恭弥が押しかけてきて仕方なく晩御飯作ってあげて根負けして結局泊まらせてしまったんだ。

 

 

と、いうことは。

 

 

 

「お前かこれ壊したの―――!」

「これ?・・・・・・ああ。鳴ったら五月蝿そうだと思って壊した」

「思うだけで壊すな!スイッチ止める位でいいでしょう!!」

「なんかそれややこしいし。面倒だし。壊した方が手っ取り早い」

「・・・・有り得ない・・・・」

 

 

 

確かにこの時計はアンティークもので、普通の時計とは違う構造をしていたのだが。

それでもよりによって壊すとか、どこまで破壊精神に冒されているんだ――と文句を言いながら。

 

よくよく話を聞いてみると、どうやら私を起こしたくなかったようで。

目覚ましの存在が安眠妨害になるとのこと。

 

ふーん、私の為。

 

 

 

「・・・・・って納得できるか!」

「それにしてもよく寝てたねは。そんなに眠たかったの」

 

 

 

はいはいわかってますとも。何を言っても無駄なのは。

 

 

 

「ん、特には。でも久々に夢も見なかったし、少し疲れてたのかもね」

 

 

 

恭弥は何時の間に起きたのだろう。

この私が人の気配に気付かず、ましてや彼が目覚ましを叩き壊した音にさえ注意を払わず寝ていたとは。

何たる失態。

 

恭弥が居なかったら殺されても仕方ない状況だった。

 

 

 


「え?」

 

 

 

自己反省をしていると、恭弥が何か紙切れを渡してきた。

二枚あり、そのどちらも番号が書いてある。

 

 

 

「・・・・これ、って」

「僕の携帯。で、こっちがボンゴレ直通」

「恭弥はいいとして、後者の意味がわからないんだけど」

「近いうちにボンゴレから依頼が入る。その連絡用ってこと」

「・・・・・・・・あの、もう一回言ってくれる?」

「同じ事を言うのは好きじゃない」

「ボンゴレから依頼って何。第一私は休暇中だって」

「・・・・・・。随分ボスに気に入られたみたいだね。絶対引き抜くって気合入れてたよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「君も、満更じゃなかったみたいだし?もし敵じゃないなら考えてみれば」

 

 

 

敵じゃない?そんな事、初めからわかってる。

 

 

 

「・・・・・・・・・・敵じゃ、なかったらね」

 

 

 

それから直ぐに恭弥は出て行った。何でも大掛かりな仕事があるらしい。

だったら昨日も用意しろよ。

 

私はといえば、もうボンゴレの誘いの事しか頭に無かった。

 

過去よりも今。今よりも未来。

 

 

「―――どうしよう、物凄くやりたい・・・・・」

 

 

私が『』としてボンゴレ・ファミリーの一員になるのは、・・・そう遠くない話。

 

 

 

 

 

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