ボンゴレは白。
でも、ボンゴレと親密なマフィアがそうじゃなかったら?
私はきっとそのマフィアを潰しに行くだろう。
完膚なきまでに潰して、私の自由を守るだろう。
そんなこと、ボンゴレに入ってしまったら、出来なくなるでしょう?
灰色の夢
微妙な沈黙が流れた。
「・・・・・・あれ。あ、ハル達もマフィアでしたっけ」
自分の言った事にようやく気付いたのか、ハルは間抜けな声を上げる。
これで本当に情報部なのか?ボスの執務室に出入りできるくらいだ、それなりに有能なはずだろうに。
「・・・・・・さん、マフィア嫌いだったんだ・・・・それは悪い事をしたね・・・・」
ボスが如何にも落ち込んでますみたいな悲しげな顔で私に謝った。
逆にこちらが罪悪感に襲われてしまう。
―――何となく、演技のような気がしないでもないが。
「いえ、その、マフィアにも依りますのでご心配なく・・・。ここが嫌いならのこのこ来ませんよ」
「さん・・・・」
「ただ、マフィアに関わって良かった例が無いものですからちょっと・・・」
良かった例が無い所ではない。
最悪だ。
私を奈落の底に突き落としてくれたのだから。自分達の身勝手な欲望の所為で。
「今まで幾つかのファミリーに何度か勧誘して頂きましたが、全てお断りさせていただいてます」
「ボンゴレも?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
即答できないところが悲しいのだが、入るのは難しい。
私自身の望みはともかく、私の存在がこのファミリーに、ひいては恭弥に迷惑を掛けてしまう事になるかもしれないからだ。
「・・・私、敵が多いですし・・・一利あっても百害は免れないでしょう」
敵は情報屋だけではない。あちこちのファミリーに存在するのだ。
最も後者は私の持つ情報が目当てではあるが。
さて流石のボスも自分のファミリーに害をなすような行為はしないだろうと思っていたら。
「ボンゴレに楯突くような気概のある敵なの?」
「・・・・は?」
さらりと流された。
「この―――ボンゴレファミリーを敵に回す事を良しとするような手強い敵なんだ?」
「・・・・・・・いえ、それは・・・・・・」
それは、多分、無い。
私が相手にしてきたのは成金弱小マフィアばかりだった。
天下のボンゴレが守護下に置くようなものにおいそれと手を出す馬鹿はいない。
・・・・今のところは。という条件がつくけれど。
「そうじゃないなら入っても問題ないよね。邪魔になるようなら脅すなり潰すなり、どうにでも出来るよ」
艶やかな笑みを浮かべ、物騒な台詞をいとも簡単に口にする。
その自信たっぷりの様を見れば、それがハッタリや虚偽ではない事がすぐに分かる。
確かにそんな事天下のボンゴレ・ファミリーには赤子の手を捻るぐらいに朝飯前か。
「そうだよね、さん?」
「・・・・・・は・・・・・」
い、と言いかけて我に返り、私は慌てて踏みとどまる。
危ない、もう少しで口車に乗せられて頷くところだった。
そういう問題ではないのだ、これは。
私自身にも問題がある。
私は人を殺している。
仕事上邪魔になった人間、命を狙ってきた刺客、そして。
マフィアの人間達を。