静寂がその部屋を包んだ。

此処に来たのは、些か早まったのかもしれない。

 

ただ、ボスの目にちらりと面白がるような光が浮かんだのは気のせいだろうか。

 

 

灰色の夢

 

 

 

「・・・・どうして、そんな事を?」

「否定しないんだな」

「する必要がありますか?・・・・手を汚した事がない等と、綺麗事を言うつもりはありませんよ」

 

 

分かりきった事に関して、嘘をつく必要は無い。

まして、彼ら程の実力者にかかれば見抜くことなど造作もないだろう。

 

では何故改めて聞く必要があるのか。

 

 

 

「プロの殺し屋にしては生温い。が、ただの情報屋にしては・・・・・敏すぎる」

 

 

 

リボーンの視線はいつの間にか私から逸れ、この部屋の扉に向いていた。

そこには一つの気配。

私がそれに気付いていた事を悟られていたらしい。

 

 

 

「雲雀、入って良いぞ」

 

「え、雲雀さん居たんですか!?」

「・・・・俺、気付きませんでした・・・くそ、アホ女と同レベルかよ!」

「ちょっと獄寺さん!それ聞き捨てならないんですけど!!」

「るっせぇ!!」

 

「・・まあ、何となくは分かってたけどね」

 

 

三者三様の反応を示す彼らを尻目に、扉はゆっくりと開いて来訪者を招きいれた。

 

 

「・・・恭弥」

「・・・・・・・・・・・」

 

 

 

恭弥は私の方をちら、と見てからリボーンに向き直る。

 

 

 

「面白そうな話してるんだね」

「まあな」

「混ざりたいなら混ざってもいいわよ」

「へえ」

 

 

 

彼は大して面白くもなさそうな顔で私の隣に座った。

どうしたのだろう。血腥い話は大好物じゃなかったのか?

 

 

 

「モノによる」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

エスパーだ。絶対エスパーだこいつ。

 

何時の間にそんな特技を、と疑わしい目で見ていた私は、恭弥の冷たい一瞥に目を逸らす。

 

 

・・・らしくも無く、動揺していた。

恭弥はこの間の話を覚えているだろうか。

 

 

『―――それで、逃げるときにかなり凄まじいことやったし今私が実行犯だと分かると殺されるというか』

 

 

私を誘拐し、私が潰した『フィオリスタ・ファミリー』は弱小マフィア。

正式構成員と準構成員全てを合わせても八十人足らずだった。

腕のいいヒットマンも居らず、構成員自体も最弱の部類。

そのくせ成金がボスをつとめていたため、お金のかかるセキュリティー部門は最上級。

 

・・・・それが命取りになるとも知らずに。

 

 

 

さん、話したくないなら無理にとは言わないよ。こいつには良く言い聞かせておくから」

「テメェの家庭教師に向かって何つー口の利き方だ?」

 

 

目にも止まらぬ速さでボスの額に銃を突き付けるリボーン。

しかし誰も騒がないことをみると、こんな風景は結構日常茶飯事のようだ。

 

――それって、ボスの権力が低いってことじゃ・・・?

 

 

 

「だって俺ボスだし」

「・・・ほう?」

「うわちょ、待てタンマその距離は当たる!!」

 

 

 

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