顔を洗って心機一転。
暗い方へ向いていた思考も、大分回復した。
普段の調子が戻ってきた頃、私は懐かしい人と再会する。
灰色の夢
まずハルが扉を開けて、私より先に部屋に入った。
と、すぐに叫び声をあげた。
「っえ、あれ、何で居るんですか!?」
誰か来ているのだろうか。そう思いつつ、彼女に続いて扉を開けた私の目の前に。
見覚えのある金髪が、居た。
彼はこちらに振り向き、満面の笑みで手を振ってきた。
「よう、じゃねーか!」
バタン。
扉を閉め取り敢えず視界から排除する。そういえば前にもこんな事があったような。
確かにさっきハルと喋っていて十五分ぐらいは経っていたかもしれないが、何故いきなり増えるんだ。
・・・・だがこうしていても仕方が無いので、部屋に入る。扉を開けたその先には、むくれた金髪男が立っていた。
キャバッローネを率いるその男は呆れた様に口を開く。
「・・・・・お前、さりげなく酷い奴だな」
「今のはわざとです」
「何ぃ!?」
ガーン、と落ち込んだ彼。
世間一般的に母性本能とやらを擽られるであろうその姿に、私は氷点下の眼差しを向けた。
「お久しぶりですね、ディーノさん」
「お、おう。三年ぶりか?」
「はい。ロマーリオさんも、お久しぶりです」
「・・・・・・・」
後ろの部下にも頭を下げると、静かに微笑み返してくれた。
さて。
ここに来てくれたのは丁度いい。この男にはひとつ聞かなければならないことがある。
「・・・・・ディーノさん」
「お?」
「約束、守ってくれなかったんですね」
「約束?」
覚えてないのかこの部下無しでは無能の男。
「・・・・・・私の事は絶対に外に漏らさないって、約束してくださいましたよね?」
にもかかわらず、この男、ハルには喋っているのだ。
「男に二言は無いとか・・・仰っていませんでしたか?」
私はにっこりと笑みを浮かべて返答を待った。
ディーノは上を向いて何やら思案している。・・・・待つこと数秒。
「――――――」 ぽむっ。 「あぁ!」
そしてそれを思い出したらしい彼は、納得顔で手を打った。
「・・・・・・・・・“あぁ”・・・・・・・・?」
あぁ、ですむと思うのか。
声の温度を更に下げて繰り返すとディーノは面白いぐらいに慌てだした。
「い、いやスマン!マジ謝る!!この通りっっ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・まあ別に実害は無かったからいいんですけど。
でも簡単に許すとまた同じ事をされかねない。
私がもう少し苛め・・・・もとい、責めてやろうと口を開いたその時。
「あの!違うんですさん!!」
何故かハルが口を挟んできた。