キャバッローネ十代目ボスによってもたらされた仕事。
この依頼は私を遥か過去へと誘い、未来への道を示す事になる。
灰色の夢
期待を満面に浮かべて、ディーノは言った。
「お前、仕事する気ねーか?」
「・・・・私は休暇中です」
「そう言うなって。ほら、前みたいに報酬弾むぜ?」
「間に合ってます。稼ぎは良い方ですから」
懐が寂しかったのは最初の数年だけ。今は豪遊出来るほどには暖かい。
仕事してばかりで使う機会がないというのが本当の原因なのだが。
それにしても何故私を指名するのだろう。
私が有名なのはマフィアを除いた裏の世界だ。つまり、マフィアが居ないからこそ有名になれたとも言える。
マフィアの世界なら良い情報屋がいくらでも居るはずだろうに。
「実はな・・・・」
「いえ話していただかなくて結構です。知りたくもありません」
知ればきっと逃げられない。
此処は引くのが賢明だ。
「お前が目撃した中国マフィアと関係あるんだけどなー」
いい年したおっさんが語尾を伸ばすな。
心の中で突っ込むと同時に、ほんの少し興味が湧いてしまった。
あの事件が私と恭弥を逢わせてくれたのだ。初めは恨んだものだが今は感謝している。
・・・・そういえばマスター、元気だろうか。
「?」
ディーノの声を聞いて、心に迷いが生じる。
少しだけなら、・・・・いや駄目だ。それが命取りになる―――そんな風に思考を巡らせつつ、私は口を開いた。
「中国って・・・・まさか、『熊猫』が、ですか?」
「ああ」
「・・・という事は麻薬がらみで?」
「ご名答」
「・・・・・・・・嫌、ですね。余り関わりたくありません」
「・・・つれねーなぁ」
「さん、どうしても駄目?俺達、この問題に一年も費やしてるんだ」
できるだけ早く解決したい、というボス。
だがそんな事、私の知った事じゃない。さっさと部下を動員させればいいのだ。
それで解決できないのなら、それまでのファミリーだっただけのこと。
・・・・・目ぇ潤ませても駄目ですってば。
私はきっぱりと断る為に口を開いたのだが。
「・・・・残」念ですけど、といいかけた私に被さる様に、秀麗な幼馴染の声がした。
「僕からも頼むよ」
・・・・・はい?
たのむ?・・・・・頼、む?
誰が?
恭弥が。
誰に?
私に。
あの雲雀恭弥が、人に頼みごとを?
「・・・あ・・の、恭弥?大丈夫?」 頭。
「その副音声は聞かなかったことにしてあげるよ」
「トンファー構えて言う台詞じゃないと思います」
「で、やるの?やらないの」
どっち。
彼は殺気をふんだんに振りまいて武器を構えて迫ってくる。
・・・・・・それは脅しだ、恭弥。