情報屋として、人間として。
必ず。
灰色の夢
「受けてくれて有難う、さん」
ボスがそれはもう満面の笑みで私を見た。楽しくて仕方が無いといったように。
その時になってようやく彼の意図がわかった。
・・・・そうか。今日の本題はこれの事だったのか。
私が本当に情報屋なのかどうかを調べるため――――では、なく。
この依頼を受けさせる事だった。
(嵌められた・・・私とした事が・・・・・)
色々とショックを受けた私を他所に、嬉々としてボスは話を進めていく。
「ボンゴレファミリーはその犯人発見に協力する事にしたんだ。『熊猫』の所為で、この頃違反者が多い」
「違反者とはいえ他のファミリーに殺られちゃ面目が立たねぇってことだ」
「見せしめにならないって事でしょ?」
「・・・そうとも言うがな」
彼とリボーンの会話を聞きながら、私は頭を巡らせる。
ボンゴレもこの問題に関わるという。それの意味する所は?
―――協力者兼見張り役の存在。
「それで、さんと一緒にやりたいんだけどいいかな?」
それは質問ではなく確認と言う。断るとは微塵とも思ってない顔だ。
正直不愉快だが、今のところ無闇に逆らう気は起きない。マフィアを相手にする以上、協力者は必要だ。
「ええ、それは構いませんけど・・・私に付くのは一人にして下さいね。目立ちますから」
「・・・そうだね、じゃあ・・・・」
さて、誰を寄越す?
余りにも幹部やその周辺だと顔が割れている。スケジュールの問題もあるだろう。かと言って下っ端すぎると使えない。
ボンゴレのボスはどんな人選をするだろう。
と、その時だった。
「それ、ハルがやります!!」
元気一杯に右手を挙げてハルが叫んだ。
どうやら男共にとって、それは予想外だったらしい。唖然とした空気が流れた。
そしてその中で一番大きな反応を見せたのがボスである。
「ちょ、何言ってんだよ!」 おお、口調まで違う。
「だってハルが一番適任じゃないですか?雲雀さんも獄寺さんも山本さんもリボーンちゃんも超幹部ですし!その点ハルは情報部の下っ端ですよ?
全然顔割れてません。それに今更この事件に新しい人を組み込むのはよくないですし!」
確かにその通りだ。・・・状況分析能力も高いようだし、彼女なら使えるかもしれない。
「駄目だそんな・・・危ないじゃないか!ハルは」
「・・・・ツナさんは・・・・ハルの事、信用してくれないんですか・・・・・?」
どうやら彼女は直ぐに泣き落としに入ったらしい。アレは絶対嘘泣き・・・
「・・・い、いやそんな事は・・・」
しかも効いてるし。
三分後。
ボンゴレのボスは見事陥落、ハルは私のパートナーになりました。
「これからよろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。そんなに危ない事はしませんので、安心してくださいね」
「はい!」
お互い改めて挨拶をして笑いあう私達。
その頃漸く普段に戻ったボスは、再び超笑顔で言った。
「じゃあさん、ハルと一緒に情報部のほうへ・・・・・・」
「行きません」
「え?打ち合わせとか」
「場所を変えます。・・・・余計な情報は仕入れない、というのが私の生き残る鉄則でして」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「それに万が一『お前は知りすぎた』とか言って消されたりボンゴレ入りを強要されてはたまりませんし――――」
私は半ば冗談のつもりで言った。
が、しかし。
・・・・・ボスは超笑顔のまま、ほんの微かに目を泳がせて黙った。
やる気だったんだな。めっちゃやる気だったんだな。
「ちぇ、失敗」
「はっ・・・・ツメが甘ぇんだよ」
策士め。
何はともあれ、私はボンゴレと共同戦線を張ることになりました。
情報屋『Xi』――――始動。