回想を終了し現実へと戻ってから。
私達は取り敢えずあの男に焦点をあてることにした。
さてさてこれからどうしましょう。
灰色の夢
「え。ディーノさんに調べてもらうんじゃないんですか?」
「はいそこストップ。あの人が出してきた資料、どんなんだったか忘れたの?」
「あ・・・と、はっきり言って役立たずでしたね」
「でしょう?もしもよ。あの男が私達の探しているターゲットだとして、もし資料に近づく事のできる人間だったら」
「マズイ、ですよねぇ。でもあのディーノさんがそんなへまするはずないと思いますけど」
「・・・・・・本当に?」
「・・・・・・・・・」
前例があるだけに何とも言えない。
誰を調べているかは極秘にするべきだろう。気付かれて警戒されては分かるものも分からなくなる。
となると自分達で調べなければいけない・・・のだが。
しかし客人のパスでは情報部なんかに立ち入れないだろうし・・・ディーノがそこまで許すとも思えない。
依頼を受けたとはいえ、所詮私は情報屋。
好き勝手ができるわけではないのだ。
・・・そんな風に考え込んでいると、ハルが何か思いついたように声を上げた。
「ん――、それじゃあハルがハッキングでもしてみましょうか?」
「・・・・はい?」
何言ってるのこの子は。
と突っ込みたくなる発言をかましてくれる。
いきなり何なんだ。しかも、ハッキング?
「ちょっと待ってハル。ボンゴレの貴女がそんな事したらまずいんじゃないの?」
「ばれなきゃいいんですよ、ばれなきゃ」
「それは激しく同意するけれども。―――っじゃなくて、やるなら私が」
「ちっちっち。さん甘いですね!今のハルは一味違うんです!!」
だから何が。
胡乱気な目付きで見やると、彼女は得意げな顔になって胸を反らした。
「キャバッローネはガードが固いですから、ファミリー名簿に行き着くのは結構大変なんですよ」
それは確かに。昔調べたときも滅茶苦茶苦労した覚えがある。
数年たった今はもっと強化されているだろう。
「でも安心してください。ハルは特別回線のパスワードを知っているんです!!」
「・・・何、それ?」
「キャバッローネとボンゴレ共同の回線があるんですよ。緊急連絡用なんですけど、そこに入ってしまえばガードが他より甘くなります。
そこから忍び込んだほうが絶対楽です!」
「・・・・それは使えるわね・・・・・」
「ですよね!!」
「でもどうしてハルがそんな事を知ってるの?」
「えっ・・・と、ですね、その、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ラズベリーパイとエッグタルトで手を打ちました」
またか。
いいのかディーノ。いいのかそれで。
「まあその回線の存在なんて、幹部以上なら誰でも知ってるんですけどね」
パスワードだって、知る人間は少なくない、とハルは言う。
「ハルには教えてくれなかったんです。・・・・・・・下っ端、だから」
「だから自分で調べたの?」
「はい。ハルはのし上がる女ですから!幹部になって左団扇で暮らすんです!!」
「・・・そ、そう。頑張って」
そして用意を始めた彼女の顔つきからすると、多分何度もハッキングを行ったことがあるに違いない。
・・・私より慣れてたりして。
「うふふふふふふふ、やっとハルの出番ですね!」
大丈夫か・・・・?