それから三時間経って。
目の前にあの男と男の家族についての資料をでん、と置かれたときには、私は思わず拍手した。
・・・・うっわー、ディーノ負けてるし・・・・
とか思いながら。
灰色の夢
「頑張っちゃいました!!えへへ」
「うんえらいえらい。この仕事が終わったら何でも好きな情報ひとつあげるわ」
「ホントですか!?嬉しいです!」
もう何て有能なのかしら、と思う。
回路から内部に侵入するまでも早いし、見回りプログラムをかわす手腕も中々のもの。
・・・ボンゴレの情報部の下っ端に甘んじているのが不思議なくらいだ。
もう少し地位が上がっても良さそうなものだが・・・
「ええと。白髪中年男の名前は・・・マリオ・パンツェッタ、ですね」
「・・・・・・・へぇ・・」
「でもあの人、マリオって顔じゃないですよね」
「・・・・・・・別にキノコ食べても大きくはならないと思うわよ・・・・」
「ロマーリオさんと似てますか?」
「似てない似てない」
それにイタリアじゃ一般的な名前だと思う。マリオなんて山ほど居るはずだし。
「あ、さん見てくださいここ」
「え?・・・・・・・・あら」
「ふふふ、ハルは見つけましたよ!この人の家系は三代前からキャバッローネに入ってます!!」
と、いうことは。
この男は既に規律違反を犯している。
「勿論さんの記憶が確かなら、ですけど」
「あらハル、私の記憶が間違ってるなんて・・・・」
にっこり。
「あるはずないでしょう?」
「・・・・・・・・・」
私の全開の笑顔に恐れをなしたのかハルは口を閉ざした。
華麗にそれをスルーして再び資料に向かう。
資料によると、彼の三代前の当主が当時のボスに気に入られ大抜擢されたらしい。
それから現当主までずっと大幹部としての地位を守り続けている。
「随分とキャバッローネに資金提供してるようね・・・」
「ずっと幹部なのもそれが要因かもしれませんね。もしかして、麻薬で稼いでたり」
「するかも、しれないわねぇ」
かも。かも。かも。
―――全部仮定の話だ。どうにも埒が明かない。
目安は付いたにしろ、忍び込むにしたって何をどう調べればいいのだろう。
作戦を練り直さなければならない。
そう思って資料を置いた――・・・と、その時。ふと。
私は反射的に言葉を紡ぐ。
「・・・・・・・・ハル、電話」
「へ?」
静かな部屋。部屋の電話が鳴っているわけじゃない。
でも。
「だから、電話。ハルの携帯じゃないの?」
「え、え、え、・・・・・・あ!?」
慌てまくった彼女がショルダーバッグから出した携帯は、確かに着信を告げるランプを光らせていた。
死角からディーノ一行を見張ったときに、着信音とバイブをOFFにしていたので分からなかったらしい。
「で、誰から?」
「は、はい・・え、雲雀さん!?」
「恭弥が?」
ふむ。私と一緒に居る事が分かっていながらかけてくるという事は、この件に関することだろうか。
私は少し嫌な笑みを浮かべながら、ハルに手を差し出す。
「私が出るわ」
「え。」
ハルが固まった隙に携帯を奪い、深呼吸。
そして、通話のボタンを、押す。