「・・・さん、どうして電話のこと分かったんですか?」
「気配がしたのよ」
「け、気配・・!?」
「そう。電波の」
・・・・私は電波を感知する女でございます。
灰色の夢
通話のボタンを押して。
私は相手が何かを言う暇を与えずに話し始める。
「毎度有難うございます『Fly
Pizza』です!」
声はワントーン高く、巷で言うアニメ声を意識して。
更に固まってしまったハルは放置決定。
「開店5周年セールにつきドリンクが只今10%引きでございます!ご注文お決まりでしたらどうぞ〜」
まぁ本当の宅配ピザ屋はこんな風には言わないだろうが。
巷のファーストフード店を手本にしてみる。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「お客様?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
携帯の向こうは静寂に満ちていた。
む、ハズしたか?
「あの、お客様?・・・・・Pronto?(もしもし)」
すると漸く、電話の向こうから深々としたため息が聞こえた。
反応が遅い。恭弥の癖に。
『・・・・・・・・・、悪ふざけは程々にしときなよ?』
「そこはノリで突っ込む所だってば」
『何で僕が』
付き合いの悪い男である。まあ、本当にノリ突っ込みをして来たら爆笑ものではあるが。
とまあ冗談はここまでにして、私は口調を真面目なそれに変える。
「それで、恭弥。用件は?」
『・・・・・・・み』
「彼女なら今お風呂に入ってるの」
嘘だけど。目の前で硬直してるけど。
私ではなくハルに、という所がちょっと気になって無理矢理出てみたが・・・一体何の話だろう。
「それとも、ハルじゃなきゃ駄目?」
『・・・・・・・・・・・・・・。ボスが、報告に来て欲しいみたいだけど?』
「うん無理」
予定内の言葉だった。が、ばっさりと切り捨ててやる。
やはり盗聴器を外して監視を振り切ったから怒ったのだろうか。
でも今ここでマフィアなんぞに出向けば、色々と工作したのが無駄になってしまう。
「今物凄く大事な局面だから、そんな暇無し」
『何もう進展あったわけ』
「ちょっとはね。これでも情報屋ですから」
今回ばかりは偶然としか言いようがない記憶に頼ったものだったが。
それでも私の情報だ。どう使っても私の勝手である。
「私達がボンゴレまで行くのは無理。かと言って誰かを寄越すのも止めて欲しいわね」
『拒否するわけ?』
「しちゃいけなかったかしら。ボス程の方なら私達の危うい立場を理解してくれると思うけど・・・」
直訳 : 『四の五の言わず黙って見てろ』。
『・・・・・・・・・・・・・君、いつか殺されるんじゃない』
「えぇ?そう?」
『もういい、わかったよ』
「ありがとう。くれぐれもボスによろしく」
『・・・・・・』
電話なら睨まれてもわからないし強気に出れる。まあ、ちょっとだけ殺気を感じたが。
普段より優位に立てた気がする。恭弥は珍しく何も言い返さずにそのまま通話を終わらせた。
・・・・勝った。