数日振りに恭弥で遊んでみた。

いい気分転換だった。

 

よし。

 

 

灰色の夢

 

 

 

 

「――ふぅ。ハル、有難うこれ返すわ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・何まだ固まってるの?」

「・・・・・・・・・・・・・・っっっさん!」

「なあに?」

「そんな可愛く言っても駄・目・で・す!何でそんな勝手な事するんですか――!!」

「だって、ねぇ」

「相槌を求めないで下さい!」

 

 

 

通話を終えハルに話しかけた途端、かなりな勢いで怒鳴られた。

どうやら彼女は先程までの錯乱状態も相まって相当血が上っているらしい。

 

仕方がないので私は努めて静かに説明し始めることにした。

 

 

 

「だって進行状況言いたくなかったんだもの」

「・・・何で、ですか?」

「ボンゴレに知られれば、必然的にキャバッローネにも知られるでしょう?今はそれじゃ意味がないのよ。

・・・カードは私達の方が圧倒的に少ない」

 

さん・・・」

 

「と、いうわけだから。明日から張り込みましょう」

「何処にですか?」

「どこ、じゃなくて、彼。『マリオ君』」

 

 

 

私はもうこの時点で腹を決めていた。

 

うだうだ悩むのも飽きた。ここはひとつ恭弥を見習って力ずくで行こうと!!

 

 

 

「私、尾行と監視は大の得意だから。これから・・・そうね、少なくとも三日は張り付くわよ」

「は、はひ―・・・でもハルは気配とか隠せないんですけど・・・・」

「隠す必要なんかないわ。情報屋には情報屋なりのやり方ってものがあるの」

 

 

 

そういう方面のプロとは違う、情報屋『Xi』の方法で。

 

私が今まで生きてきた中で身に付けた技術で。

 

 

 

「それで少しでも証拠を掴んだら―――」

「・・・掴んだら?」

 

 

「吐かせる。」

 

 

「・・・・・・・・わぁ・・・・・」

 

 

 

 

彼にとって。

目撃者である彼にとって。

 

殺戮者である私は、恐怖の対象である事は間違いない。

あの惨劇は忘れられるような光景ではなかった。・・・・・絶対に、覚えているはずだ。

 

だから其処に付け込む。

 

その所為で後ろ暗い過去が陽の目に晒される事になっても、構わない。

 

 

 

 

 

 

それから三日間。

 

 

 

「・・・・・結構聞こえるんですね」

「自作だもの、当然よ」

「・・・・・・・・」

 

 

街中の店外で集音機を使って声を拾ってみたり。

 

 

 

「・・・お、美味しい・・・」

「流石は三ツ星・・・」

 

 

 

男とその家族が超高級レストランで食事している隣の席で二人だけの晩餐会を開いてみたり。

 

 

 

「・・・さんっ・・・何でこんなに胸開いた服なんですか!?・・・ひ、卑猥です・・・!」

「ああうん、良く似合ってるわよ、ハル」

「うぅ・・・ハルはもうお嫁にいけません・・・・」

 

 

 

男が入っていった怪しげなバーに夜の蝶に扮して侵入してみたり。

 

 

とにかく全力で男を追いかけた。

睡眠時間を削って食事も不規則。お肌には最悪の生活だった。

 

それらは決して上品な行いではないと知っていたが、構わなかった。それにハルを巻き込むことも。

彼女だって、弱音や文句は言わなかった。仕事だと割り切れる人間だったのだろう。

 

 

―――その決死の努力の甲斐あってか、私達はひとつの事実を手に入れた。

 

 

 

 

三日目の夜、これまた超高級のホテルのスイートルームにて。

 

私達は隣の部屋で、またまた自作の盗聴器を仕掛けて会話を聞いていた。

どうやら愛人と会っているらしい。

 

・・・・・・・そして、そのやり取りの中で、麻薬への関連を知った。

 

 

男が愛人に、麻薬を与えていたのだ。ねだる女に、与える男。

この会話は証拠としても使えるだろう。男を捕まえた後で、この女性に話を聞いてもいい。

ボンゴレやキャバッローネは麻薬には酷く厳しい。

 

売買するだけでなく、使用していなかったとしても所持しているだけで処罰の対象になるのだ。

だからもう、張り込みは終わり。きっかけさえ掴めればそれで良かったのだから。

 

後は、あの男から何もかもを聞き出せばいいだけ。

 

 

 

「・・・・ハル、行くわよ」

「もうですか?」

「・・・・・・・・私は他人の行為を盗み見する趣味は無いんだけど。ハルは違うの?」

「あ」

 

 

 

どうぞ好きなだけ愛人とよろしくしていればいい。

 

今日が最後になる。

 

 

 

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