ボンゴレファミリー本部の最上階で。

ボスと私は超笑顔で対峙していた。

 

・・・・・その光景は宛らコブラとマングースのようであったと、後に関係者は語る。

 

 

灰色の夢

 

 

 

超高級ホテルを後にした私達は、早速恭弥に電話を掛けた。

 

経過報告ではなく、最終報告をするためである。

 

 

 

「あ、恭弥?ボスと会いたいんだけど、時間調節お願いできる?」

『たった数日間でどういう心境の変化なわけ』

「変化したのは状況の方。これから最終調整に入るからボンゴレとキャバッローネの力を借りたいの」

『・・・・・了解。追ってまた電話する』

「ありがとう」

 

 

 

元々向こうから要請がかかっていたので、直ぐに話が纏まったらしく連絡は早かった。

 

というか、早すぎた。

その為ホテルを後にして帰ろうとしていた私達は、その足でボンゴレファミリー本部に向かう羽目になってしまう。

 

 

不気味なまでの行動の早さがボスの心境を如実に表している気がする・・・。

 

そして、私達は否応無しに、本部に到着し。

 

 

 

最上階にて、直視できないほどの輝かしい笑顔に出迎えられた。

 

 

 

「やあ、ハル、さん。お疲れ様」

 

「長らくお待たせして申し訳ありませんでした、ボス」

「・・・・・・・・・は、はい!」

 

 

 

私は負けじと全開の笑顔を溢したが、ハルは既に腰が引けていた。

横目で見ても口元が引きつっているのが良く分かる。

 

・・・・以前よりも遥かに迫力を増したボスは綺麗な笑顔のまま労いの言葉を続けた。

 

 

私はそれとなく聞き流しながら周りを観察してみる。

 

獄寺はボスの後ろで目線を床に落としたまま青褪めていた。

リボーンは明後日の方を向き、此方を見もしない。

人の良さそうな青年――山本というらしい――は、意味も無く竹刀を持ち替えながら乾いた笑みを浮かべている。

 

そして、雲雀恭弥は。

それみたことかと微妙に責めるような目で私を見ていた。

助ける気は毛頭無いらしい。

 

 

・・・・・恭弥はともかく、他の人々には可哀想なことをしたかもしれないと、ほんの少し反省した。

 

 

 

「調査が佳境に入っていたとはいえ・・・先日は失礼な事をしてしまって、本当にすみませんでした」

「いや、こちらが思慮不足だったんだ。さんは悪くないよ」

 

 

ね?と微笑まれたので、私も更に微笑み返す。

 

 

にこにこにこにこにこにこにこにこにこにこ。

にこにこにこにこにこにこにこにこにこにこ。

 

 

「それから私、商談に入るときはいつも盗聴妨害器を付ける癖がありまして・・・ご迷惑をお掛けしました」

「不躾な事をしてしまったよね。外へ行く調査員には付けるよう教育してあったから・・・」

「いえ、そんな」

 

 

にこにこにこにこにこにこにこにこにこにこ。

にこにこにこにこにこにこにこにこにこにこ。

 

 

「後は・・・警護してくださっていた方の事なんですけど・・・・その、職業柄、監視だと思ってしまって・・・」

「報告してなかったのは此方のミスだから。・・・それにしても、上手に抜け出せるんだね。やっぱりうちに入らない?」

「まぁ、ご冗談を。でも有難うございます。・・・私も情報屋の端くれですからね、もう慣れてしまって」

 

 

にこにこにこにこにこにこにこにこにこにこ。

にこにこにこにこにこにこにこにこにこにこ。

 

 

誰も、突っ込めないようだった。私もボスも止める気が無かったし。

 

この永遠に続くかと思われた煌びやかな直視に耐えない笑顔が飛び交う空気は。

 

 

ノックもなしに飛び込んできた、今回は無能のレッテル付の金髪男によって壊された。

 

 

 

「っ犯人が分かったって、本当なのか!?」

 

 

私とボス以外の人間は、その登場に心からの安堵の表情で。

 

私達は、誰にも聞こえないくらいの舌打ちをする事によって、迎えた。

 

 

・・・空気読め。

 

 

 

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