まだまだパーティーは終わらない。
灰色の夢
ボンゴレファミリー本部最上階、ボス専用執務室の隣の部屋。そこには獄寺と山本が寛いでいた。
ずっとボスの部屋に居るわけにもいかないので幹部達はバラバラになって待機中なのである。
やがて徐に山本がパソコンを取り出し、何かの作業をし始めた。
「・・・お前何やってんだ?」
「ん――ちょっとな・・・今回の標的も、昔俺が引っ張って来た奴だし?取引相手位割り出せるかなーなんて」
人事担当の山本にとって、自分が引き入れた者が問題を起こすのは心苦しいのだ。
責任だって取らなければならない。
「それにはまず盗まれた情報の特定って事で。やらないよかマシだろ?」
「山本・・・・」
「ま、その前にさんが片付けちまうだろーけど」
暇だしな、と笑って山本はパソコンに向き直った。
それを何と無しに見守る獄寺。すると・・・・
「・・・・お?おお?」
山本はいきなり奇妙な声を発した。大きく目を見開いて何かを見ている。
「何だ?」
「・・・・あのさ。これ」
視線を外さないまま指差す画面を獄寺が横から覗き込む。
「・・・・出席名簿?それが何だって・・・・」
「だから良く見ろって。・・・・情報部情報処理部門第九班班長三浦ハル、出席・・・・だってよ」
「・・・・・・・っはぁ!?オイ待て、何であいつが!?」
「・・・『Xi』の仕事に連れて行ったとか・・・?・・・いやでもあのさんが、ボスの許可も無しに・・・?」
「・・・・・チッ・・・取り敢えず、報告行くぜ報告!」
「だな!」
一方。
ターゲットの観察を終えた私はハル達に近づき、挨拶をする風を装って合流した。
「どう?楽しんでる?」
「・・・・まあまあですね。料理は美味しいですけど」
「ま、この雰囲気じゃあね」
「―――何か見つけられましたか?」
「ん・・・・実際見てみると『相手』が意外に小柄で童顔で。三十路前っていうのが信じられないって事位なら」
「・・・・・・・・」
私がハルと話している間、アシ&虫除けの三人は黙ったまま一歩後ろに控えている。
今回の件に関して一切口出し無用と厳命されているらしく、話に混ざっては来なかった。
・・・・兎に角さっさと取引を始めて欲しいと思う。そうすればこんな所直ぐにおさらば出来るのに。
どうもこういう雰囲気は嫌いだ。馴染めない。
いつも以上にざわめく心を宥めながら、すっかり日が沈んだ窓の外を眺めていると。
ふっと窓に見覚えのある人影が映った。
(あれ、は・・・・)
「・・・・・・・・・部長?」
「え、部長?何処にですか?」
「今・・・ほら、あのカーテンの陰に入っていこうとしてる」
「あれ、ホントですね・・・・・でも部長が来るなんてハル聞いてませんよ?いつもこんな所行ったりしない人ですし」
「見るからにねぇ」
情報部情報処理部門部長。
今年で確か54歳だったか。嫌味たらしい癖に変な所でエネルギッシュな暑苦しい男である。
それとは対照的にいっその事スキンヘッドにした方がマシだと思える程見苦しく寒々しいバーコード頭。
見た目は出来ればお近づきになりたくない様な人物ではある。
・・・それでも頭は良いらしい。頭が良いと言っても、それは狡賢いという意味でだが。
(加えて、統率力も悪くは無い。過激派寄りではあるものの・・・・表立って動く事はないし)
「・・・少し、気になるわね」
「はい。・・・あ、それじゃハルが見張っておきましょうか?」
「そうしてくれる?」
「任せてください!」
「助かるわ。ありがとう」
うん。見張るだけなら大丈夫だろう。
この三人だってハルより遥かに強いのだから、きっと守ってくれるはず。
「・・・・頼めるかしら?」
私はカルロ達を真正面から見つめて訊いた。
何もかも省いた簡潔な言葉だったけれど、三人は瞬時に理解してくれて。
「ああ」
「大丈夫!」
「・・・・・頑張る、よ」
命に代えても。
・・・・そう目が言っていた。