残ったものは、確かにある。
今は気付かなくても。
灰色の夢
沈黙はそう長くは続かなかった。
「獄寺君」
「、はい!」
「直ちに会場に向かって。状況を確認次第、逐一こちらに報告すること」
「分かりました。直ぐに行きます!」
そう言うが早いか、獄寺は双子の部下を連れて部屋を出て行った。
綱吉はそれを見送りながら再び口を開く。
「リボーンも一緒に行って、検証を頼む」
「・・・・命令か?」
「ボス直々の勅令。・・・・聞けないとは言わせないよ?」
「ちっ、しょーがねぇな」
その言葉とは裏腹に、嫌そうな素振りを一切見せずに部屋を出て行くリボーン。
誰もが分かっていた。今の状況が、酷く厳しいものであるということを。
「で、俺は?」
「山本はここに残って、情報を整理してくれるかな。きっと・・・一筋縄じゃいかないと思うし」
「ツナ・・・」
( こんな風になる為に、彼女を連れてきたわけじゃない )
綱吉は気遣わしげな山本の視線から逃れるように立ち上がり。
そして―――胸に湧き上がる激情を抑えながら口の端を上げ、硬い声で宣言する。
「これはボンゴレへの宣戦布告ととらせてもらうよ。犯人が分かった暁には・・・それ相応の代償は覚悟して貰わないと」
「ああ。当然、だよな?」
「・・・・叩き潰せばいいだけだよ」
綱吉、山本、雲雀。
三人三様ではあったが、それぞれ覚悟は決まったようだ。
―――遅れは取ったが、何一つ逃しはしない。
「じゃ、俺ちょっと資料とってくるわ」
「よろしく、山本」
山本も出て行き、部屋には綱吉と雲雀の二人だけになる。
流石の雲雀も驚いたのだろう。立ち上がったときのまま無表情で壁に寄り掛かっていた。
今は不機嫌そのものというか、静かに怒っている気配すらある。
綱吉はそれを気に止めた様子も無く、先程とは打って変わって朗らかな様子で声を掛けた。
「それで、雲雀さんには少し頼みたい事があるんだけど」
「勿体ぶってないでさっさと言えば」
「うん。今回パーティ主催だった同盟ファミリーの所に行って、探りを入れてきてほしい」
「例えば?」
「取り敢えず、彼らが被害者なのか加害者なのか・・・まず確かめないといけないし」
「それで?」
「取り引き相手だった、という可能性も残ってる。兎に角引き出せる情報は全て―――手に入れてくれるかな」
「・・・・ふうん」
そこまで言うと、雲雀は少し興味を持ったように笑った。そこで更に後押しをする。
「勿論出し渋るようなら・・・・丁重におもてなし、してくれてもいいよ」
「・・・引き受けたよ」
「ありがとう。何かあったら連絡してね」
いつもなら多少の抗議があるはずなのに。
やけに素直に出て行った雲雀の後姿を見ながら、綱吉は軽くため息を吐いた。
同盟ファミリーがどうなろうと知った事ではない。
雲雀が暴れて苦情が来たとしても、後で幾らでも理由を作る事ができる。
「・・・・くそっ・・・」
激情のままに拳を机に叩きつけるが、胸の痛みは治まらなかった。
自分が何処で何をしていたのか、全く思い出せない。
自分がどんな状態なのかも、全く分からない。
「・・・・!―――、・・・!?」
(・・・・・・・・な、に・・・?・・)
「・・・・ん、・・・・・ですか!?―――さん!」
聞き覚えのある、声。
それに、この気配、は・・・・
(・・・・ハル・・・?・・・・・)
「―――っさん!!しっかりしてください!!!」
「・・・・え・・・・・・?」
呼びかけに、目を覚まして。
最初に見えたのは―――綺麗な、星空・・・・・・